銀行が出す遺産分割協議書の落とし穴

~その書類、本当に大丈夫ですか?~

相続が発生すると、銀行から「こちらの遺産分割協議書に署名してください」

と言われることがあります。

多くの方は、銀行が出してくれた書類だから安心だろう

と思い、そのまま署名・押印してしまいます。

しかし実は、銀行の遺産分割協議書には注意すべき点があります。

今回は相続相談でもよくある「銀行の遺産分割協議書の落とし穴」

について解説します。

 

❖銀行の遺産分割協議書とは?

銀行が用意している遺産分割協議書はその銀行の預金だけを対象にした書類です。

例えば内容は次のようになっています。

例)

〇〇〇銀行の預金

1,200万円

これを

長男が取得する

この内容に相続人全員が署名・実印押印します。

これにより銀行は預金の払い戻しや名義変更ができる

という仕組みです。

つまりこの書類は銀行手続きを進めるための書類なのです。

 

実は「相続全体」を決める書類ではない

ここが一番のポイントです。

銀行の遺産分割協議書はその銀行の預金についてだけの合意です。

相続財産には

預金

・不動産

・株式

・投資信託

・生命保険

・車

・借金

など様々なものがあります。

銀行の書類だけでは相続財産全体の分割は決まっていません。

 

❖よくあるトラブル

相続相談で実際によくあるケースです。

ケース 預金だけ先に分けてしまった

銀行の書類で長男が預金1,000万円を取得

その後不動産を含めた遺産分割の話し合いになり次男が言います。

不動産は長男が相続するんだから預金はもう少しこちらに欲しい

しかし預金はすでに長男が受け取っているため調整が難しくなります。

 

ケース 銀行ごとに協議書を作ってしまう

相続財産

銀行A 800万

銀行B 600万

銀行C 400万

銀行ごとに協議書を作ると

A銀行 → 長男

B銀行 → 次男

C銀行 → 長女

と全体のバランスが見えなくなることがあります。

 

ケース 相続人の認識がズレる

銀行の手続きが終わると「相続はもう終わった」

と思う方もいます。

しかし実際には相続全体の分割が決まっていない

ため後でトラブルになることもあります。

 

❖理想的な進め方

相続では

①まず財産を全部確認する

②全体の分割を決める

③遺産分割協議書を作る

④銀行や法務局で手続き

という順番が理想です。

つまり最初に「全体の遺産分割協議書」を作るのが安全です。

 

❖銀行の書類を使ってはいけないの?

結論

使っても問題はありません。

ただし銀行の書類はあくまで銀行手続き用と理解しておくことが大切です。

可能であれば相続財産全体の遺産分割協議書を別途作成しておくと安心です。

 

❖まとめ

銀行が出す遺産分割協議書は便利ですが注意点があります。

ポイントは3つです。

・銀行の預金だけの協議書

・相続全体を決める書類ではない

・先に預金だけ分けると後で調整が難しくなる

相続は

「部分最適」ではなく「全体最適」

で考えることが大切です。

銀行の手続きだけに目を向けるのではなく

相続財産全体を見て分割を考えることが、円満な相続につながります。