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スポーツ時、他人にけがを負わせてしまった……こんなときどうなる?(前編)

私は日頃から、趣味でテニスやゴルフなどのスポーツを楽しんでいます。
しかし、どんなスポーツでも大けがをする危険をはらんでいます。今回は日常生活上のリスクマネジメントの側面でお話ししたいと思います。

(ケース1)テニス
練習中やゲーム中に
・ボレーやスマッシュが相手の前衛(=ペアでおこなう「ダブルス」において、手前側でプレーするポジションのこと)の体に当たってしまった
これはテニスの経験者ならご存じのシーンだと思います。
そのほかにも
・打ったボールが相手の顔面に当たり、眼鏡やサングラスを破損させてしまった
・更に運悪く眼球にあたり大けがになってしまった
など、考えられるけがはいろいろとあります。

(ケース2)ゴルフ
・硬いボールを時速200kmくらいの猛スピードで飛ばす
・自分が打ったボールをコントロールすることがとても難しい
・よく注意をしないと他者にけがをさせる危険が避けられない
ゴルフもまた、大けがになる可能性が大いにあるスポーツといえるでしょう。

■けがの責任はどうやって取るのか

「打ったボールが相手の目に当たって大けがを負わせた」
このようなケースは、いったいどのように責任を取ったらいいのでしょうか。

実は、一般的なスポーツ中の事故については、著しいルール違反や危険なプレーなどがない限り、賠償責任は発生しないと考えられています。
「えっ、スポーツ保険には賠償特約がありますよね!?」と思う方もいることでしょう。
しかし、テニス保険やゴルフ保険などの個人賠償特約が使えないケースも実はたくさんあるのです。

■ スポーツ中のけがは損害賠償の請求が可能か?

(1)損害賠償責任が発生するのは例外的
スポーツではけがをしやすい状況が頻繁に起こります。たとえばラグビーやサッカー、バスケットボールなどのコンタクトスポーツは、ひとつのボールを複数人が奪い合い、なおかつ他者との接触が前提となっているため、けがも生じやすいスポーツです。また武道や格闘技、子どものドッジボールも同様ですよね。そのため「スポーツにけがはつきもの」との考えが一般的に広く認識されています。
以上のようなことから、スポーツ中のけがについては損害賠償請求の対象とならないことが原則です。裁判例でも、原則として損害賠償責任を負わないと解釈されています。
「加害行為については、それがスポーツのルールに著しく反することがなく、かつ通常予測され許容された動作に起因するものであるときは、そのスポーツの競技に参加した者全員がその危険をあらかじめ受忍し受傷事象を承諾しているものと解するのが相当であり、このような場合加害者の行為は違法性を阻却するものというべきである」と判断されています。参加者は、スポーツに内在する危険を受忍していたものとして、一般的には不法行為(加害行為)とはならないのです。

(2)損害賠償を請求される場合もある
しかし注意義務違反や、わざと相手にけがをさせたような場合には責任を問われることがあります。

●ルール違反をしてけがをさせた場合
けがをさせた際に
・各スポーツのルールを明らかに守っていなかった
・スポーツ中の行為として通常考えられない行動をとっていた
このようなケースでは、損害賠償を請求可能だと考えられます。

●過失が認められる場合
不法行為による損害賠償請求は、故意、または過失によって他人にけがをさせてしまった場合などで認められます。スポーツ中のけがも、同様に損害賠償責任を負うことになる可能性があるでしょう。
ルールを無視して故意に「わざと」相手にけがをさせた場合でなくとも
・スポーツを行うにあたって必要な注意を怠った結果けがをさせた場合
・ケガを負った側もまったく注意を払っていなかった場合
などは、過失があったとして責任を負います。
「そのスポーツのマナーやルールを守ってプレーしていたのか」「被害者は危険を回避するための措置をとっていたのか」といった点が問題になります。

このときの「過失」とは、危険な結果が起きるかもしれないと予想することができ、その危険な結果を防止できたにもかかわらず、しなかった(できなかった)場合を指します。
競技によっては、過失相殺が認められるケースが珍しくないという点も知っておきましょう。


もし損害賠償保険が発生した場合、責任の所在が気になりますよね。
次回の後編にて、もうすこし詳しく解説します。