残高0円で死ねますか?

「最期に後悔のない人生」を送るための戦略

『DIE WITH ZERO(ダイ・ウィズ・ゼロ)』は、ビル・パーキンス氏が著した「人生の幸福とお金の使い方」に関する本を紹介します。
老後資金の最大化よりも「人生の質の最大化」に焦点を当てたライフ・マネープランの提案書です。タイトルの通り「ゼロで死ぬ(=お金を残さずに使い切って死ぬ)」という考え方が中心にあります。

■人生の目的は「思い出の最大化」

本書の基本的なメッセージは、「お金を貯め続けて老後に備えること」よりも、「その時々の人生で最大限の体験と思い出を得ること」に価値を見出すべき、ということです。著者は、お金を使うタイミングを見極めることで、人生の幸福度を最大化することができると説いています。

若いうちは体力があり、年を取るごとに体力や好奇心は低下します。よって「お金を使って得られる経験」は年齢によって質が異なり、単にお金を持ち続けて老後に楽しもうとするのは非効率であり、後悔を生むことが多いと指摘されています。

■9つのルールで構成される「DIE WITH ZERO」の哲学

1. 人生のあらゆるステージで「経験に投資せよ」
2. 人生は「思い出ポートフォリオ」の構築である
3. 健康・時間・お金の三角形のバランス
4. 早く「引退」を目指すのではなく、「人生のピーク」を意識せよ
5. 子どもへの遺産は「死後」ではなく「生前」に
6. 健康があるうちにやりたいことリストを実行せよ
7. 仕事のしすぎは人生の無駄遣いである
8. 恐怖心(特に将来不安)が浪費を生む
9. 「ゼロで死ぬ」ためには逆算思考が必要

■日本人にとっての教訓

日本人の価値観でいう「倹約」「貯金第一」の価値観と真逆です。特に「老後のために我慢して貯める」という発想が強い私たち日本人にとって、この本は衝撃的な内容かもしれません。
私たちFPも老後資産形成のための貯蓄や運用について常に奨励していますが、そのお金の使い方についても、もっとしっかり相談者とイメージすべきだと考えさせられました。
しかし、人生の充実をお金の「使い方」から見直すことは、特に高齢化が進む日本において重要な視点です。自分や家族の時間価値、体力、幸福度を考慮しながら、お金を「生きた資源」として活用する方法を再考するきっかけとなると思いました。
老後の資産寿命が死ぬ前に尽きるのも勿論困りますが、死ぬ間際が資産残高のピークなんてことにならないように充実したライフプランをしっかり立てることが大切です。

■まとめ

『DIE WITH ZERO』は、「最期に後悔のない人生」を送るための戦略書です。お金は手段であって目的ではない。限りある時間と体力、そしてお金をどう使うかを意識することで、人生の本当の豊かさを得ることができる・・・この哲学は、今後のライフプラン設計や老後資金の考え方に大きな影響を与えるかもしれません。