50代・60代から考える「オルカン思考」

――世界経済を味方につけて、これからのお金を育てる

この書籍は、普段50.60代の老後生活設計の相談を受けている私はとてもすっきりと腹落ちする内容でした。

50代、60代になると、投資に対する考え方も少しずつ変わってきます。

20代、30代なら「これから何十年も働くから、資産を増やしていこう」と考えられます。

一方、50代・60代では、

「老後のお金は足りるだろうか?」

「今持っている資産をどう運用すればいい?」

「株価が大きく下がったらどうしよう?」

「いつから、どのくらい取り崩せばいい?」

「子どもにいくら残せばいい?」

という、より現実的な問題が出てきます。

そこで大切になるのが、「お金を増やすこと」だけを目的にしない長期投資です。

1.これから伸びる会社を「当てなくていい」

投資を始めると、「これから日本株が上がるのか?」「米国株はまだ伸びるのか?」「次はインドなのか?」と考えてしまいます。

しかし、10年後、20年後にどの国や企業が世界をリードしているかを正確に予測することは誰にもできません。

だからこそ、特定の国や企業に賭けるのではなく、世界中の企業に幅広く投資して、世界経済全体の成長を取り込むという考え方があります。

これが「オルカン思考」の基本です。

2.「日本だけ」に資産を置く必要はない

日本で生活していると、預貯金も年金も住宅も日本円です。

そのため、資産まで日本円だけに偏っているケースがあります。

しかし、世界では米国、欧州、中国、インドなど、さまざまな国で企業活動が行われています。

日本だけでなく世界にも資産を分散することで、日本経済だけに老後の生活を依存しない資産づくりができます。

もちろん、世界株式にも価格変動があります。

大切なのは「海外なら安心」ではなく、世界に分散することでリスクの偏りを抑えるという考え方です。

3.50代・60代でも「時間」は味方になる

「もう50代だから、投資をするには遅いのでは?」

そう考える必要はありません。

50代なら、60代、70代、80代までを考えると、資産運用にはまだ長い時間があります。

60代でも、その後20年以上の生活が続く可能性があります。

つまり、老後資金のすべてを「すぐ使うお金」と考えるのではなく、

「今使うお金」
「10年以内に使うお金」
「10年以上先に使うお金」

に分けて考えることが重要です。

長く使わないお金については、世界経済の成長を取り込む運用を検討する余地があります。

4.「暴落しない投資」を探さない

50代・60代になると、資産が大きくなっているため、株価の下落が精神的にも大きな負担になります。

例えば、3,000万円を運用していて20%下落すれば、評価額は600万円減ります。

このとき大切なのは、

「下落しない商品を探す」ことではありません。

「下落しても生活に困らないお金」と「長期運用できるお金」を分けておくことです。

生活費や数年以内に使う予定のお金まで株式に投資しなければ、相場が下落したときにも慌てて売却する必要がなくなります。

5.老後資金は「全部運用」しなくていい

老後資金を考えるとき、資産を全部投資に回す必要はありません。

例えば、

生活費として使うお金 → 預貯金など
数年以内に使うお金 → 安全性を重視
10年以上先に使う可能性があるお金 → 長期運用を検討

というように、お金の役割を分けます。

この「お金の色分け」ができると、投資に対する不安はかなり小さくなります。

6.「いくら増やすか」より「何歳から使うか」

50代・60代の資産運用で重要なのは、運用利回りだけではありません。

むしろ、

「何歳から、毎年いくら使うのか」

を先に考えることが大切です。

例えば、65歳から月25万円を使うのか、月30万円を使うのか。

旅行や車、住宅リフォーム、介護、医療などの予定があるのか。

こうした支出を考えたうえで、「どのくらい運用に回してよいか」を決めます。

投資は人生設計の後にあるものです。

7.資産は「増やす」だけではなく「使う」

投資をしていると、

「もっと増えてから使おう」

と考えがちです。

しかし、老後になってもお金を使わずに貯め続けていたら、何のための資産形成なのか分からなくなります。

旅行に行く。

趣味を楽しむ。

夫婦で食事をする。

孫のために使う。

自宅を快適にする。

そして、必要であれば家族に残す。

「資産をどう使うか」まで考えてこそ、資産形成は完成します。

8.相場が上がっても、下がっても「自分の計画」を見る

株価が上がると、「もっと投資しよう」と思い、下がると「怖いから売ろう」と思います。

これは自然な感情です。

しかし、50代・60代の資産運用では、相場の動きだけで判断するのではなく、

「このお金はいつ使う予定だったか?」

を確認することが重要です。

長期で使わないお金なら、一時的な下落に過剰反応する必要はありません。

反対に、数年以内に使うお金なら、利益が出ているときに現金化するなど、計画的にリスクを下げることも大切です。

9.「投資を続ける」ことより「続けられる仕組み」を作る

長期投資で最も難しいのは、始めることではなく続けることです。

だからこそ、

  • 投資する金額を無理しない
  • 世界に分散する
  • 長期で考える
  • 生活費は別に確保する
  • 定期的に資産配分を確認する

など、相場に振り回されない仕組みを作ります。

50代・60代では、「最大限のリターン」よりも、安心して続けられる運用のほうが重要になることもあります。

10.投資の目的は「豊かな老後」をつくること

最後に一番大切なのは、

「投資は人生のためにある」

ということです。

投資で1億円を作ることが目的なのではありません。

老後にお金の不安を減らし、やりたいことを我慢せず、家族との時間を楽しみ、必要なときには家族を支えられる。

そのために資産を育てるのです。

だから50代・60代の「オルカン思考」は、

「世界経済の成長を味方につけながら、資産を守り、育て、そして必要なときに使う」

という考え方だと言えます。


50代・60代の方に一番お伝えしたいこと

「投資をするか、しないか」だけで考えないでください。

まず、

① 生活を守るお金
② 近い将来に使うお金
③ 10年以上先のためのお金
④ 家族に残すお金

に分けて考えてみましょう。

そのうえで③のような「すぐには使わないお金」について、世界経済の成長を取り込む長期・分散投資を考える。

これが、50代・60代にとっての「オルカン思考」です。

「何を買うか」より、「何のためのお金なのか」。

そして、

「いくら増やすか」より、「そのお金をいつ、どう使うのか」。

この順番で考えることが、これからの資産運用では大切です。

FPからのメッセージ

お金を増やすことが、人生の目的ではありません。
人生を豊かにするために、お金を上手に働かせる。

長期・分散投資は、そのための一つの方法です。